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マイクロスリープは事故を引き起こす

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瞬間的な眠りの功罪

ピーター・トリップさんの場合もランディーガードナー少年の拗合も、脳科学的に厳密に評価すれば、まったく眠らなかったと断定するのは的確ではありません。いずれのケースも、時折、「マイクロスリープ」と呼ばれる瞬間的な眠りをとっていたと考えられるからです。

マイクロスリープとは、数秒程度、瞬間的に眠ってしまう特殊な睡眠現象です。睡眠不足にもかかわらず無理に起き続けようとすると、マイクロスリープが現れます。ただし、眠ってしまうといっても、ごく短い時間ですので、外見とは起きているように見えることもあります。

264時間にわたって起き続けたガードナー少年の場合は、目は開けているものの、身体をゆすったり話しかけたりしても反応が返ってこなかった瞬間がありました。当時は、そもそもマイクロスリーブの存在自体が知られていませんでした。ですから、彼がその時間に眠っているとは誰も思いませんでした。

しかし、今から思えば、間違いなくその瞬間にマイクロスリーブに陥っていたと考えられます。この点では、264時間という断眠記録は、正確にいうともっと前に途切れていたということになります。

実際、日本やドイツでは、脳波を計測しながら断眠に挑戦する実験が行なわれています。この場合は、脳波で厳密に覚醒していることを確認し続けますので、マイクロスリーブをとることはできません。起きていられた時間は、それぞれ102時間と114時間で、いずれもガードナー少年のケースの半分以下です。ですから、逆にいえば、マイクロスリープは、数秒間というごくわずかな時間、眠るだけですが、睡眠の効果という点では決して小さくないということが推測できるわけです。

マイクロスリーープの有無は、断眠実験の終了後にも意外な形で現れました。マイクロスリ几フをとらない完全な断眠の場合は、回復するには長い時間を要しました。それに対し、マイクロスリーブをとったであろうトリップさんやガードナー少年の場合は、一晩ぐっすり眠っただけで充分に回復したそうです。特にガードナー少年は、翌朝にはいつも通り高校に登校し、同級生を驚かせたといいます。マイクロスリーブの力は恐るべしといったところです。

マイクロスリーブには、天使と悪魔の二つの側面があります。睡眠不足に陥ったときに、脳の機能が破綻するのを最小限の時間で防いでくれるという点では、マイクロスリーブは天使だと言えます。

ところが同時に、マイクロスリープという仕組みがあるがために、私たちはついつい睡眠不足を精神力で克服しようとしてしまいます。その結果、居眠り運転をはじめ、果ては原発事故やスペース・シャトルの事故に至るまで、深刻な事態を招いてしまうこともあるのです。この点では、マイクロスリープは間違いなく悪魔です。

どうかマイクロスリーブの悪魔に、あなたの大切な人生を狂わされないように、質の高い睡眠を着実にとるように心がけてください。 

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