最適な睡眠時間は、年齢によっても異なる
「寝る子は育つ」のメカニズム
必要な睡眠時間の長さは、同じ個人でも年齢によって異なってくるものです。このことを充分に自覚していない人が多いため、思わぬ落とし穴に陥ることがよくあります。
一般的には、年齢を経るに従って必要となる睡眠の長さは短くなる傾向があります。これは、特に成長ホルモンの分泌と深い関係があるのです。
成長ホルモンには、分泌される時間帯にユニークな特徴があります。ノンレム睡眠のうち、ステージ3とステージ4という深い睡眠のときだけしか分泌されないのです。
成長期には、その名の通り成長ホルモンが不可欠です。そのため、このホルモンがしっかりと分泌されるように、ステージ3とステージ4の睡眠を充分にとる必要があります。このためには、睡眠全体の時間も長い必要があります。「寝る子は育つ」と言われますが、これは医学的にも根拠がある格言だったのです。
ところが、成長期が終わると成長ホルモンの分泌も少なくなります。さらにその後も、年をとるに従って、成長ホルモンの分泌量は低下の一途をたどります。その分、若いときほどは、長い睡眠時間が必要なくなるわけです。
まったく同じ理由で、日中にどの程度、肉体的な運動をしたかによっても、睡眠時間は異なってきます。鍵を握っているのは、やはり成長ホルモンの分泌量です。
量はかなり減るものの、成長期が終わった後も成長ホルモンは引き続き分泌されます。それはこのホルモンに、身体の成長以外にも役割があるためです。そのうち最も重要な目的は、筋肉を修復し増強することです。
オリンピックではドーピング検査が強化されていますが、最も昔から行なわれてきたドーピングは筋肉増強剤でした。実は、この正体は成長ホルモンそのものです。これが、成長ホルモンに筋肉の増強作用があることの何よりの証拠です。
日中に長時間、激しい運動をしたら、夜はぐっすり眠れたという経験を、どなたもお持ちでしょう。その原因の一つは、筋肉を修復し増強する必要が生じるためです。人体は睡眠を増やしてしっかりと成長ホルモンを分泌させる戦略をとっているのです。
たとえば、格闘技K-1の魔裟斗選手は、何と一日に9時間も眠るようにしていると語っています。とことんまで筋肉を酷使する彼の仕事の性質を考えれば、実に理に適った方法だと言えます。
「若い頃のように眠れない」は当たり前
逆に、その日一日、ほとんど運動らしい運動をしていないと、寝つきが悪くなる傾向があります。これも身体の仕組みから考えれば、当然のことです。肉体的にはそもそも長時間の睡眠が必要ないため、身体が睡眠を欲していないのです。どの程度の長さの睡眠が必要なのかについては、年齢や日中の活動量も考慮に入れて、最適な量を導き出しましょう。
現実には、一日中、動かない生活をしているにもかかわらず、活動的だった若い頃のように眠れないと悩んでいる人が少なからずいます。悩むことによって余計に眠れなくなり、本当に不眠症に陥ってしまうこともあるから要注意です。
これは、「精神生理性不眠」と呼ばれている症状の典型例です。精神生理性不眠とは、眠らなければという焦りが精神的な緊張感を高め、余計に眠れなくなる現象を指します。「思い違い不眠」という症状もこの一つです。
精神生理性不眠は、年齢を重ねることや日中の活動量の低下によって、身体が必要とする睡眠の量が低下することが引き金になるケースが圧倒的に多いのが実情です。逆にいえば、こうした変化について正しく理解するだけで、精神生理性不眠のかなりが予防できるわけです。
高齢になれば、深い睡眠状態の時間はどなたでも減少します。特に五十歳を過ぎると最も深い眠りであるステージ4の時間が大幅に低下します。また、夜中に目を覚ましやすくなり、また、床に就いてから眠りにつくまでの時間も長くなる傾向があります。
これらは、年齢を重ねることにより、大なり小なり誰にでも表れる生理的な現象です。もちろん、これだけでは病気だとは言えません。
正しい情報を知っておけば、不安に陥ることはありません。それぞれの年代とライフスタイルにピッタリ合った睡眠時間を見つけておきましょう。

